ここでの比較は当然の事ながら、学術的検証を進めたうえではなくあくまでも主観の範囲にしか留まらないという事を断ったうえで、敢えて進めていきたいと思います。ヒルズブランドの不幸は、自らのブランドをしっかりと確立する前に、メディアなどによってそのある一部の特性が広く人々に知れ渡ってしまった事にあります。結果的に、六本木ヒルズ開業5年 脱出するヒルズ族の面々(上)及び(下)にもあるように、ヒルズに集い働いていた、より本質的な価値観を持っていた人から次々と同地から離脱。最後は、ヒルズ族という言葉すら「死語」になるとまで言われるようになりました。
派手に振る舞いメディアの注目を集める少数の人がいたなかで、本来地道に築きあげられる「何か」が確立する前に、虚構のブランドが築き上げられてしまったのです。その、真実になりきれない部分を維持する事は実質的に不可能だったということを、現在の一連の傾向は示しているのかもしれません。
老舗の京料理店における「場」のブランドは、派手にメディアで紹介されることを重視するというよりは、お得意さんからの口コミで序々に伝わっていった長い歴史の結果としてのブランドです。もし世代が変わり味が落ちる、振る舞いに不備があるということが続けば、おのずと客足は遠のき、淘汰される事でしょう。安定と競争という絶妙なバランスの中で、名店はそのブランドを維持していくのです。そして味を超越した「経験」をお客に提供するために店舗空間とそこでひとときを過ごすひとたちの時空間が最高のものとなるよう最大限の努力することで独特の雰囲気や空気というものがつくりだされていきます。
このような形で形成されたその場のブランドはその場の実とミスマッチすることなく、正しく表現されます。ブランドと実情がマッチするからこそ、経営側も息切れすることなく長期的にその付加価値を維持出来るわけです。メディアの力は最近のあらゆる事業において重要な役割を果たしますが、同時に両刃の剣でもあります。誇大表現で自らのブランドが誤って伝わらないよう努力をしていくことがこれからの企業にとって最重要課題のひとつとなるでしょう。老舗京料理店が築きあげた、メディアに頼らない形でつくりあげられた場のブランディングはそれを進めるうえでも参考になるかもしれません。
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