2010/12/14

ジャーナリズム学科の学生にモバイルメディアを教える上での7つの提言

米国サンフランシスコ州立大学の2010秋学期において、Contemporary News Media
の授業を教えている Staci Baird氏による7つの提言が大変興味深い。以下、原文から簡潔に要約する。

1)「物語」を発見したとき、スマートフォンをジャーナリズムのツールとして
  使いこなすことを習慣化するように指導せよ。
  スマートフォンは生活の中では浸透していても、ジャーナリストとして
 「活用」するには別次元のスキルが必要になる。常に新たな「ニュース」
  を確認したところで携帯を取り出すということが本能になるように
  指導するべき。

2) モバイルメディアはソーシャルメディアであることを理解させよ。
   FacebookやTwitterの他にも画像共有サイトなど多数あるが、常に
   最新のツールに関する知識を深めるように指導するべき。

3) とにかくツイートをさせるような授業をせよ。
   Baird氏の授業では、ゲスト講演者のときは、リアルタイムツイートを
   講演内容のポイントを押さえる形で行わせたとのこと。

4) アプリを使い方を教える事に時間を割かないようにせよ。同時に
   モバイルビデオの好例と悪例を数多く提示せよ。
   最終的には自分たちで技術的問題を解決出来るのが重要。好例と
   悪例を見せつつ、自らの携帯でビデオ報道出来るようになるのが理想。 

5) 学生たちにツールやアプリを評価しブログで掲載するように指導せよ。
   Baird 氏の授業ではGoogleの担当者がクラスを訪問し、Googleが
   提供しているツールについて説明。そのToolを学生たちに評価
   させたとのこと。

6) モバイルニューズサービスをできるだけたくさん試用し評価させよ。
   5)と同様に様々なニュースサービスを経験させそれをブログで書く
   ように指導したとのこと。学生ならではの彼らの趣向性には
   驚かされたとBaird氏。

7) モバイルメディアのみのを扱うことは避けるべき
   もし技術的な部分を中心に講義をするのであればそれも可能だが、
   そうでなければ通常のジャーナリズム系講義の中に課題として
   モバイルツールを活用した課題を多数あたえることが大切との
   こと。ラジオ(音響)関係であれば、オーディオツールを使った
   課題を、ビデオ報道であれば、スマートフォンを活用してビデオ
   映像を作成するといった課題を提示したほうが学びつながる。

1)はかなり重要。自分はジャーナリストではないのですが、記録を常にするということの重要性は、研究でも十分感じていること。特にヒアリング調査をしているときは、ヒアリングが終わった直後に自分が知りたいと思っていた情報が提示されるなんてことも多かったりします。3)については、映像学部が米光先生がおこなっていますね。

2010/10/09

[備忘録]日本アニメ産業におけるアニメ表現技法のイミテーションとイノベーション

国内でアクション重視のアニメが多数制作される中で、徐々に台頭してきたのが独特なカット割り行うアニメータの存在。波の表現技法の発展を進めたのが小田部羊一氏。フルアニメーションで描かれていた波を限られた枚数でダイナミックに描けるように研究。『どうぶつ宝島』でそれを実現し、『バンダコパンダ』でもそれを踏襲した。(http://bit.ly/bZV0nh)。
 一方で、アクション表現やエフェクトにおいて独自の技法をつくりあげていったのが金田 伊功氏。『ザンボット3』(77)や『ダイターン3』(78)などで示した、パースを極端に歪ませることでシーンをよりダイナミックにする金田パース、手足を極端にゆがませ一見キテレツなデザインでありながらジャンプ姿をクールに決める金田ポーズ、『さよなら銀河鉄道999』のプロメシューム(81)に代表されるような、光の反射や爆発のフレアなどがまるで生命であるかのような動きをしめす金田エフェクトや金田光りなどを生み出し、次の世代へとその技法が模倣されていった(http://bit.ly/bW83ss)。キャリアの後半ではスクウェアエニックスに入社。『Final Fantasy XIII』での召喚シーンなどで前述の技法を3DCG表現へと転換するべく尽力した。
 金田氏の影響を受けつつ、実際の木造建築物爆破の現場や、ロケット花火を多数水平に打ち上げたときの様子を観察しながら、独自の爆破表現を確立していったのが板野一郎氏(http://bit.ly/aDhOGb)。『イデオン』(80)に端を発した、爆破表現や弾幕表現には、氏独自のレンズに対する深い知識を取り入れ、広角レンズ・望遠レンズ・標準レンズの使い分けをカット割りごとのみならず、カット内にも取り入れる、追尾ミサイルを最低でも4発同時発射させ、追尾パターンを複数同時に表現するといった手法を編み出してしていった(http://bit.ly/cNqO8v)。のちにこれらの表現は板野サーカスと称されるようになり、世界的にもItano Circusというそのままの名称のもと著名になっていた。これらはフライトコンバット系ゲームでも
MODとして、熱心なファンにより開発されている。(http://bit.ly/aGrV4V)

2009/10/22

広告効果に関する5つの概念の一般化

 
 90年代の広告に関する研究が進む中で、Vacratas, Demetrios & Tim Ambler は
 広告効果に関し、5つの概念の一般化を提示した。具体的には下記のとおり

 1.認知・情緒・経験(行動)は広告効果の3つの媒介変数。この3つのどれを省略しても他の要素の効果を過剰に予測してしまう結果に(つまりバランスが重要)

 2.短期的な広告弾性値は小さく、商品ライフサイクルとともに減少

 3.成熟した購買頻度の高い商品の市場では、広告投資へのリターンは  急速に減少。購買サイクルあたり既に確立しているブランドについては、低い頻度(1回から3回の露出(リマインダー))でも充分に購買行動にとつながる

 4.媒体効果空間は支持、広告階層は否定

 5.感情測定は認知的バイアスに介入する (Vactras and Ambler 1999:35-36)
 
 
  Vacratas, Demetrios & Tim Ambler (1999) How advertsing works:
  What do we really know? Journal of Marketing, 63,26-43
  

2008/12/10

コンビニで地域の特色を引き立てる

京都は空間ブランディングの宝庫です。景観条例による規制強化も京都全体の空間としてのブランドを維持したいという京都人の願いと無関係ではありません。
制約に頭を悩ませる企業も多くありますが、むしろその制約メリットとして生かす事で京都独自の「場」を表現しブランド化に成功している企業も存在しています。ローソン八坂神社前店などその好例です。京風コンビニとまで評価されるように、販売する商品やサービスはそのままに、外観を見事に京仕立てとすることを達成しました(最優秀は京風コンビニ京都市優良屋外広告物賞)。

2008/10/04

経営者が蓄積された場のブランドを裏切ったとき...

当然の事ながら、本来「実」をしめすはずのものが「虚」にすり替わってしまう事もあります。その代表的な例が船場吉兆による一連の偽装問題でしょう。ニュース特集:船場吉兆偽装にもあるように、1930年の創業からこれまで培ってきた実績とお客の信頼のうえに立つブランドを船場吉兆は、一瞬にして崩壊させてしまいました。結果的に船場吉兆は廃業に追い込まれました。つまり、組織としての存続を否定されてしまったのです。

吉兆グループがこれまで培ってきた実績と、顧客からの信頼。吉兆ブランドは「顧客の声」「顧客の期待」に応え続けた結果として作り上げられたもののはず。このたゆまない努力については、京都吉兆嵐山本店総料理長徳岡邦夫氏の部ログからもうかがい知る事が出来ます。
 吉兆グループとしては、ブランドを著しく傷ついてしまった船場吉兆の「背徳行為」に対する憤りもあるかとは思いますが、今後は、自ら提供するサービスによって、マイナスイメージを吹き飛ばすような「場」の更なるブランド化を実現するのみでしょう。吉兆グループの「実」の部分が社会に、そして、消費者にどのような形で伝わっていくのか、今後の活躍に期待です。

2008/09/25

ヒルズブランドの不運、老舗京料理店ブランドの幸運

ここでの比較は当然の事ながら、学術的検証を進めたうえではなくあくまでも主観の範囲にしか留まらないという事を断ったうえで、敢えて進めていきたいと思います。ヒルズブランドの不幸は、自らのブランドをしっかりと確立する前に、メディアなどによってそのある一部の特性が広く人々に知れ渡ってしまった事にあります。結果的に、六本木ヒルズ開業5年 脱出するヒルズ族の面々(上)及び(下)にもあるように、ヒルズに集い働いていた、より本質的な価値観を持っていた人から次々と同地から離脱。最後は、ヒルズ族という言葉すら「死語」になるとまで言われるようになりました。

派手に振る舞いメディアの注目を集める少数の人がいたなかで、本来地道に築きあげられる「何か」が確立する前に、虚構のブランドが築き上げられてしまったのです。その、真実になりきれない部分を維持する事は実質的に不可能だったということを、現在の一連の傾向は示しているのかもしれません。

老舗の京料理店における「場」のブランドは、派手にメディアで紹介されることを重視するというよりは、お得意さんからの口コミで序々に伝わっていった長い歴史の結果としてのブランドです。もし世代が変わり味が落ちる、振る舞いに不備があるということが続けば、おのずと客足は遠のき、淘汰される事でしょう。安定と競争という絶妙なバランスの中で、名店はそのブランドを維持していくのです。そして味を超越した「経験」をお客に提供するために店舗空間とそこでひとときを過ごすひとたちの時空間が最高のものとなるよう最大限の努力することで独特の雰囲気や空気というものがつくりだされていきます。


このような形で形成されたその場のブランドはその場の実とミスマッチすることなく、正しく表現されます。ブランドと実情がマッチするからこそ、経営側も息切れすることなく長期的にその付加価値を維持出来るわけです。メディアの力は最近のあらゆる事業において重要な役割を果たしますが、同時に両刃の剣でもあります。誇大表現で自らのブランドが誤って伝わらないよう努力をしていくことがこれからの企業にとって最重要課題のひとつとなるでしょう。老舗京料理店が築きあげた、メディアに頼らない形でつくりあげられた場のブランディングはそれを進めるうえでも参考になるかもしれません。

場のブランドを脅かす様々な要素

老舗の京料理の事例が場のブランディング成功例と言えるのであれば、その相対的な位置づけにあるのが六本木ヒルズです。
Moneyzine『リーマン倒産で、六本木ヒルズのブランド失墜「ヒルズの呪い」などと揶揄も』の報道によれば、リーマンブラザーズ倒産が、ヒルズブランドに更なるマイナスの影響をあたえているとのことです。現在Livedoorリスログにて、「六本木ヒルズのイメージ」に関するアンケート調査をおこなっていますが、回答者532人のうち(9月25日10時50分現在)、71.1%が悪いと回答しています。

具体的に何が悪いか?どのようなイメージが「悪い印象」となっているか、までは調査の範囲外ですので、これ以上の解釈は困難なのですが、「六本木ヒルズ」に対して一般の人々が持つイメージの変遷におけるターニングポイントは東京地検のライブドア家宅捜査でしょう。これは前述の報道でも言及されていました。

堀江氏がライブドアのCEO時代だった際にインターンとして鞄持ちを経験し、その後、自らも起業したという当時東大生だった保手澤彰人氏のブログがその頃の大学生たちの気持ちをある程度代弁しているように思えます。

特に、前述のリンク先の2005年12月のブログで言及している「世界一」は、一連の事件が発覚した後で実施された下村健一氏とのインタビュー時に言及した「世界一」の意味と比較し、随分変化が生じているように見受けられます。

「世界一」になりたいという目標を持つか否かに関わらず、多くの若者にとって、ライブドア事件前の六本木ヒルズは「ジャパニーズドリームの象徴」であり、「勝者の象徴」であった事は確かでしょう。それが不正が明らかにされるにつれ、もともと拝金主義的だった、堀江氏の言動(あくまでもメディアが断片的にとらえた同氏の姿でもありますが)などと重なり「虚栄」、「繁栄から崩壊への道を転がり落ちる金というものの儚さ」、「権力闘争の虚しさ」というイメージが増幅され、前述のアンケート結果のようになっているのだと思えます。

更に重要なのは、このイメージが堀江氏個人ではなく、ヒルズという働く「場」のイメージそのものに反映されたという点です。これは、前述のインタビューにおいて、保手澤氏が「ヒルズ族はダサい」と言っている点とも合致します。この言葉は堀江氏個人ではなく、ヒルズ族のビジネススタイル全体に感じられるイメージを語っているのだと解釈出来るからです。

当然のことながら、六本木ヒルズで働いている方のほとんどは、誠実且つ勤勉に働いている事でしょう。また、拝金主義と見られた傾向などもおそらく実像とはかけ離れているはずです。ですが、そのようなイメージを一般の人たちがヒルズ全体に感じてしまった事は否めない事実でもあるのです。つまり、一連の事件やその前後のある意味過剰に報道されたヒルズ族のライフスタイル、そしてその場を中心にうごめく価値観的なものが、場のブランドを無意識のうちに作り上げてしまったということになります。そして、いったんつくりあげられてしまった「場」のブランドを覆すのは容易ではありません。そこに冒頭で引用したような、リーマンの破たんが重なりあい、「ブランド失墜」と表現される結果となっているのです。